2022/01/07 11:41


こんにちは。
新年が明けましたね。
東京は昨日午後からしっかり雪が降り積もり、久々の雪景色となりました。
早速ですが、本日から販売がスタートしているtiglis olim(ティグリスオーリム)
について少しお話させていただきます。

年末にご好評いただいたインドネシアのハーバルドリンクでもあるJAMUを使用したトラ
それと同じ型で今年の干支に因んだトラなチョコレートをもうひとつ製作しました。
それが”李徴”です。

もうこの時点で「あー、ハイハイ、寅年だし山月記ね、言うと思った」
と呆れている方もいらっしゃるかもしれませんが…

その山月記(1942年・中島敦)にでてくるキャラクター、
若きエリートにして自ら行き詰まり、出張中に発狂し行方を晦まし、そのまま虎と化してしまった李徴。
そんな李徴の数少ない友人の一人である袁傪が、”人喰い虎”が出ることで恐れられている地方で
まさにその”人喰い虎”に遭遇したところ、その本性はトラではなく李徴であると気づいたことから
二人の会話によって李徴のこれまでのことが語られる、という物語です。

SNSが盛り上がり、コミュニケーションの一端を担っている現代において、
批判や評価はついて回り、社会的にかなりのエリートであるだとか特異な状況に置かれていなくても、
”隠れ李徴”は大変多いのではないでしょうか。

それは、この便利になったネット世界を通じて、
自らの精神世界を深めているような”まやかし”にかかりやすくなっているからかも知れません。

そういう中で比較され、お金を稼がねばならず、
愛する人を見つけ、家族を持ち、老後の心配をして…
ア、考えただけで虎になりそうです。

内容やその質はさておき、
一番簡単に、かつ日本人でも得られる自己肯定感は、やはり社会的に立場のある他者から評価されることでしょう。
謙遜が美徳とされる日本文化において、自己肯定感となり得る条件の大きなものに
客観視されているかどうかというのがポイントみたいです。
自分だけ良くてもみんなが変だって言ったら変なのかもな…
みたいな。
(そんなことないのにね)

社会的に認められ、他者から高い評価を受ける
果たしてそれが本当に嬉しいことなのか。
李徴はずっとこの問題と戦っていたように思います。

ちなみに筆者の嬉しいことといえば
朝起きてカーテンの隙間から青空が見えた時とか
推しが大勢の前で活躍して輝いている時とか
テンパリングがとってもうまくいった時とか
そんな感じです。笑


私自身は他者から評価されること自体あまり嬉しくないので
お褒めいただいてもニコニコしていることがほとんどですが、
帰って一人になった途端どっと疲れが出ます。

自分のことを自分以上に上手に褒めてくれる人に出会ったら
家族になってみたいですね。
そんな人と作る家族はあったかいだろうな、と思います。


さて。脱線しましたが、
本日からお買い求めいただけるtigris olim(ティグリスオーリム)
内容は、
・トラ
・ハート
そして
・李徴
の3種類のチョコレートが一箱にアソートされています。


”李徴”には、京都の老舗茶舗が初釜(※)のためにリリースした新春限定のお抹茶を使用しています。
ローホワイトの甘いまろやかさのなかに、溶けながら広がる抹茶の華やかで明るい香りと後から追いかけてくるタンニンで、
新年のご自身もどうかアナタらしく過ごしていけるようにと願いを込めました。
原料に限りがあるため、売り切れ次第終了とさせていただきますが、ぜひ味わっていただきたいチョコレートになりました。
※初釜:年明け最初に行われる茶会のこと。また、年が明けて初めて釜に火を入れることの意味。

ちなみに”初”という漢字をウブと読むときの意味のひとつに
「生まれたときのままであること、自然のままであること」
というものがあります。
ここまでの解釈と、”初”の意味、両方に通じ、中島敦の山月記のキャラクターから名前をもらいました。


現代の李徴たちへ

"all is vanity(色即是空)"
いつも優秀であることや、いつも何かに苛まれていることだけに生きている実感を求めないで。
周りを見過ぎれば自分の輪郭は消えてしまう。
自分を見過ぎれば自分の意識は消えてしまう。
”ただ、いまここにいる”という静かな奇跡を味わえるかどうか、2022年。


ウブでいいじゃん!



(中島敦、すごいなあ…)

地上に生かされていることだけで、まじで幸せを感じることを彼は知っていた気がします。
本年もどうぞMariposalily chocolateをご贔屓くださいませ。